事例16 筋ジストロフィーの初診日


小学生の時に、親戚で常染色体優性遺伝である筋緊張性ジストロフィー(筋強直性ジストロフィー)を発症した人がおり、親戚が集められ検査を受けました。

この検査日を年金機構が初診日と認定したため、初めて症状が出て受診し診断を受けた日を初診日とされませんでした。

初めて症状が出た時は厚生年金加入期間でしたが、障害厚生年金が認められなかったケースです。


7歳の時に叔父と叔母が相次いで優性遺伝型の筋ジストロフィー(筋強直性ジストロフィー)である事は判明し、血縁関係のある者全員が集められ、検査を受けさせられました。

この時はまだ遺伝子検査というものがなく、その他の検査を受けられ、基準値をほんの少し超えている程度で自覚症状もない事から、誤差の範囲内であるとされました。

ただ、遺伝しているともしていないとも判定できませんでしたので、高校に入る前に検査を再度受けるよう指示をされただけでした。

その後、高校進学前に同じ病院で再度検査を受けられ、この時も症状は認められないという結果でした。

それから20年近く何事もなく過ごしておられましたが、30代後半になった頃に長距離を歩く事がしんどいとか、握力が低下したといった自覚症状が出現し、小学生の時に検査を受けた病院を受診されました。

過去に検査を受けた病院を受診されたのですが、筋ジストロフィーが研究対象だったため、1970年代の最初のカルテが保存されていました。

その為、診断書作成医療機関における初診日というところが7歳の検査の日となり、初診日が20歳前だから、障害厚生年金を認めないという決定がなされました。


ご自身で申請されていて、審査請求からお願いしたいという事でしたので、全ての経過をお聞きし、成人するまで発病していなかった事を証明する事にいたしました。

発病していないという事を証明するのは難しいですが、体育の状況や通勤の状況等の具体的な状況証拠をそろえ、少なくとも20歳までは何ら問題なかった事を証明しました。

その結果、筋ジストロフィー(筋強直性ジストロフィー)の初診日は、厚生年金期間中に初めて症状を自覚して受診した日として認められました。

筋ジストロフィーのような遺伝性の疾患は、生まれつき因子を持っておりますので、20歳前の障害基礎年金しか受給できないと思われがちですが、原因遺伝子を受け継いでいないかもしれませんし、仮に受け継いでいても発病する前に天寿を全うする可能性もありますので、障害厚生年金を受給する事が可能です。



筋ジストロフィーの種類


X染色体連鎖(伴性劣性遺伝 性染色体劣性遺伝)

デュシェンヌ型
ベッカー型


X染色体に異常がある型です。

男性はXY,女性はXXとなりますので、異常なXを1本しか持たない男性に主に発病します。

女性の場合は、異常なXと正常なXがあるため、発病はしません。

両方とも異常なXを持っている場合は、理論上は発病しますが、そうなる確率は非常に低く、殆ど男性だけに見られる病気です。

父親がこの型の筋ジストロフィーの場合、生まれてきた女の子はこの染色体のキャリアという事になり、その女の子が生んだ男の子は50%の確率で発病します。

この病気を発病される方の3割近くが、その人から遺伝子異常が始まる孤発例という報告もあります。



常染色体優性遺伝

AD-エメリ・ドレイフュス型
顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー
筋緊張性ジストロフィー(筋強直性ジストロフィー)


こちらはX・Yに関係ない型となります。
つまり男女の区別はありません。

どちらか一方に異常があると発病しますので、子供に遺伝する確率は50%です。
(今回の事例はこの型になります。)



常染色体劣性遺伝

遠位型筋ジストロフィー
先天性筋ジストロフィー
福山型
ウールリッヒ型
メロシン欠損症
インテグリン欠損症
ウォーカーワールブルグ症候群


こちらもX・Yに関係ない型です。
従いまして男女の区別はありません。

こちらの型は両方(一対)の染色体に異常のある時に発病します。
従いまして、キャリア同士の子供でも発病確率は25%となります。

近親婚で発病確率が増加しますので、地理的に隔離された地域で多くみられますが、移動手段が徒歩しかない時代ではないので、稀な病気になっていくでしょう。



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