Q&A15 障害年金を遡って請求する時の注意点

障害年金を遡って何年分も受給できたという話を聞かれた事があると思います。

障害年金を遡って申請する事を、遡及(そきゅう)請求や認定日請求・本来請求といいます。

これが出来るのは、初診日から1年半経過した日から3ケ月以内に受診しており、そのカルテが残っていて診断書が取得できる場合です。
(初診日から1年半経過した日が20歳の誕生日前なら、20歳の誕生日の前後3ケ月の診断書となります。)

※初診日より1年半待たずに障害認定日とされる障害(足の切断や、透析の開始、人工関節の置換等)の場合は、それぞれの障害認定日となります。
詳しくは、「Q2:障害認定日とは」を参照ください。

この診断書が取れない場合は、基本的に遡及請求が出来ません。

ケースによっては、認定日の診断書を取得できなくても、認定される事は可能ですが、極めて例外的なケースとなります。

障害認定日が5年以上前というケースも多くあり、カルテの保存年限を過ぎているために遡及請求できなかったというケースが多いです。

※カルテの法定保存年限は5年となっております。
近年は電子カルテが導入されており、5年を超えて残っている事が多くなりました。
平成20年以降は残っているケースが多いですが、地元の診療所でご年配の先生が診察されているところでは難しいでしょう。

最近開業されるようにお医者さんは、殆ど電子カルテを導入されておりますので、この先ずっとカルテが残る可能性が高いです。



また、受診はしていても、肝心の測定や検査が行われていないケースもございます。

その為、遡って認められるのはかなりハードルが高くなっております。

特に、平成24年頃から精神障害に対して認定が厳しくなり、障害認定日以降に働いていた場合、遡及して(遡って)認められる事が殆どなくなりました。

遡及して(遡って)申請する権利はありますが、診断書代だけが無駄になるケースもありますので、遡及して(遡って)認められるかよく見きわける必要があります。



次に申請の際の注意点ですが、遡及して(遡って)申請した場合、「額改定請求書」というものを添付するかしないかの判断も必要となります。
※額改定請求とは今の等級を上げてくださいという請求です。
遡って(障害認定日では)3級で、現在(申請した時点)から2級だと判断して遡及して(遡って)請求する場合は、「額改定請求書」を添付する必要があります。

この「額改定請求書」を添付していないと、両方とも3級と認定された場合に不服申し立て(審査請求)ができません。(Q5: 額改定請求を参照ください。)

これは、障害認定日に遡って3級と認め、それ以降ずっと同じ処分が続いていると年金機構は認定した形になり、現在の分の診断書については何ら処分をしていないという事になります。

処分をしていない以上、処分に対する不服を申し立てる事ができません。

慣れていない社労士ですと、このあたりの事を知りません。

ただ、これが幸いするケースもあります。

うつ病等の精神障害のケースですと、病状に波があるため、1年以内に大幅に悪化する事もあります。

遡って3級で、現在からも3級と判断していた場合、「額改定請求書」を添付していると、逆に処分をしたという事で、1年間は額改定請求ができません。

「額改定請求書」を添付していた事が仇となるケースがあります。


私の所に、「別の社労士に申請をお願いしていたが、遡っても現在からも3級となった。現在は2級と思うので審査請求からお願いしたい。」という依頼がありました。

この社労士さんは、このあたりの事に詳しくなく、「今の等級のまま1年は辛抱してください。」と説明されておりました。

そこで、申請された書類のコピーを年金事務所から取り寄せていただいて確認したところ、この「額改定請求書」が添付されていない事に気が付きました。

診断書から申請した時点(現在)も3級相当であると判断し、審査請求の勝ち目がないと判断しました。

そこで、この結果に落ち込まれて、病状が悪化しているという事が確認できましたので、すぐさま額改定請求を行いました。

このように、何でもかんでも「額改定請求書」を添付すればいいという訳ではなく、診断書の内容から添付するべきか、それとも添付してはいけないのかを判断する必要があります。

 

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