Q&A16 再生不良性貧血で障害年金を申請する時の注意点

再生不良性貧血で障害年金を申請するには


再生不良性貧血で障害年金を申請する時は、初診日でもめる事が多いです。

多くの方が、再生不良性貧血と診断された日を初診日だと勘違いされております。
実際は、町の診療所や健康診断などで、「貧血」とだけ診断されて、しばらく経過観察を受けていたりするケースもあります。

多くは「汎血球減少症」とか、血小板が少ないという事で大きな病院に紹介され確定診断にいたります。

従いまして、初診日は診断される前の診療所での初診日になります。
問題は、貧血を診断されていただけで、経過観察を受けていただけのケースです。

この場合、別の病気で大きな病院に行って判明するという事もあり、初診日の扱いが難しくなります。

私の所での相談者さんでは、その辺の事を詳しくお聞きし、より有利になるように申請しております。

ある方は、退職後に再生不良性貧血が判明されていたのですが、退職の2年前に風邪で受診した際に貧血を言われていた事を聞きだし、当時のカルテの内容から初診日を厚生年金時代と主張して申請した事があります。

こうする事によって、障害基礎年金だけの申請ではなく、より有利な障害厚生年金も申請出来ました。

このように、再生不良性貧血では初診日の判断で結果が大きく異なる可能性があります


次に、実際に等級に関しまして、ゆっくりと再生不良性貧血が進行していった方ですと、相当数値が悪くてもある程度の日常生活を送られている方が多いです。

高度の貧血になっているにも関わらず、身体が慣れてしまっているため、ヘモグロビン濃度が7g/dlを切っているのに仕事をされている方もおられました。

この場合、認定に際して一般状態区分表が軽くなってしまい、数値的には満たしているのに、年金がおりないというケースがあります。

また、再生不良性貧血の患者さんの多くが、なるべく輸血をしないで頑張られます。
やはり、感染症のリスクや、鉄が体内に溜まりすぎるというリスクがありますので、極力避けたくなるのはわかります。

しかし、輸血の回数が満たせない場合は、諸症状で認定される事になります。

その中には、「易感染性」と「出血傾向」を満たす必要があります。

この「出血傾向」というのが再生不良性貧血の患者さんにとってはネックになります。

血小板数が3万/㎕以上あると、止血ができるため、なかなか出血傾向有りとはなりません。

その為、輸血をしてない事ために、再生不良性貧血の認定基準である検査数値を満たしているにも関わらず、認定されない事もあります

現在、認定基準を見直す事になっておりますので、「出血傾向」ではなく「易出血性」と文言を替えるよう意見を出しております。

以上のような問題が再生不良性貧血にはありますので、申請される前に一度ご相談してください。



再生不良性貧血とは?

再生不良性貧血」とは一般的な貧血ではなく、厚生労働省の特定疾患(難病)に指定されている病気です。

英語でaplastic anemiaといいますので、略してAAと言われます。


貧血の多くは鉄欠乏性貧血と呼ばれるもので、貧血の患者さんの7割を占めております。
体の鉄分が不足する事により、血液中の赤血球が不足する病気です。

生理で血液が失われる時に、一緒に鉄分も失われますので、女性に多い貧血です。
鉄分を補充(摂取)する事で、自然と改善して行きます。


しかし、再生不良性貧血の場合は、骨髄の中にある血液を作る造血幹細胞が後天的な原因で損傷して減少し、血を作る能力(造血能力)が低下する病気です。

その結果、末梢血中のすべての血球(赤血球・白血球・血小板)が減少します。

ちなみに、赤血球・血小板・白血球の3系統のすべてが減少している状態を汎血球減少症と言います。

この汎血球減少症には大きく二つの原因があり、一つは再生不良性貧血のような骨髄の機能の低下によるものであり、もう一つは脾臓が腫大する事によって末梢における血球破壊が亢進されるものです。



骨髄中の造血幹細胞が損傷して減少した結果、本来造血幹細胞がある場所に、脂肪細胞が入ってきてしまいます。
このように造血幹細胞が脂肪細胞に置き換わった状態の骨髄を脂肪髄といい、再生不良性貧血を診断する大きな根拠となります。

これを調べるために、マルク(骨盤穿刺)をして顕微鏡で骨髄の状態を直接目で確認し、骨髄異形成症候群(MDS)や発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)等の病気と異なる事を確認し、診断されます。

 

再生不良性貧血の治療法は?

免疫抑制療法

自分の免疫であるTリンパ球が造血幹細胞を攻撃しているために、正常な血球に分化する前に破壊されてしまっています。
そのため、Tリンパ球のはたらきを抑制させるために、免疫抑制剤を投与します。

ネオーラル(シクロスポリン)、ATG(抗胸腺細胞グロブリン)、ALG(抗リンパ球グロブリン)といった薬です。

ATGは昔は馬から作られておりましたが、近年は兎から作られたものを投与します。
効果に関しては、どちらも差がないという事になっておりますが、いろいろな意見があるのも事実です。

ネオーラル(シクロスポリン)の投与が一般的で、軽症の患者さんの第一の選択肢であり、ほかの治療と併用して行われる事も多いです。


蛋白同化ステロイド療法

タンパク同化ホルモン(ステロイド)を投与する治療法です。
赤血球の産生を刺激するホルモンを増やす事によって、造血を促す効果があります。

プリモボラン(酢酸メテノロン)というお薬です。

ただ、男性ホルモンなので、筋肉増強といった効果もあるのですが、肝臓に障害が出たり、声が低くなる、体毛が濃くなるといった事が起こります。
そのため、女性の患者への投与は要注意となり、副作用を説明された上で投与されます。

患者会に参加していて、実際に体毛が濃くなったとか、声が低くなったというような体験談を聞きます。
服用をやめてから、声が元の高い状態に戻ったといった話もお聞きします。


骨髄移植

骨髄移植とは、正常な造血幹細胞をもっている健康な人からの骨髄液を採取し、患者に移植する治療です。

移植した骨髄液に含まれる造血幹細胞が、患者の体で血液を産生すると、造血機能が回復します。
移植後はドナーさんの血液型になるため、同じ血液型のドナーさんでないと血液型が変わってしまいます。

また、血球のDNAが異なるため、いわいるDNAキメラとなってしまいます。

成功率は医療の発展と共に上昇しておりますが、リスクの伴う治療であるため、重症度の高い患者さんに適応されます。


支持療法

いわゆる輸血です。

貧血で起こる諸症状を改善するため、輸血を行います。
ただ、今ある症状を和らげるために行うものであり、血球にも寿命があるため、効果は数週間です。

一般にヘモグロビン濃度は7g/?を下回ると心不全の危険性が増すため、7g/?を維持するように行われます。

一回の輸血で、1年分の鉄分を体内に入れる事になり、鉄が過剰に内臓に溜まってしまい、多臓器不全を起こすという問題がありました。
現在は、鉄キレート剤がありますので、重篤な副作用は少なくなりました。

※鉄分は生きていくうえで必要なミネラルですが、過剰に体内にあると障害を起こして、最悪死に至る事もあります。

 

再生不良性貧血の重症度

ステージ5:最重症
1と、2または3を満たすもの

1:好中球数<200/μL
2:血小板数<20,000/μL
3:網赤血球絶対数<20,000/μL


ステージ4:重症
少なくとも下記の2項目を満たすもの

1:好中球数<500/μL
2:血小板数<20,000/μL
3:網赤血球絶対数<20,000/μL


ステージ3:重症
少なくとも下記の2項目を満たし、定期的な輸血を必要とするもの

1:好中球<1,000/μL
2:血小板<50,000/μL
3:網赤血球<60,000/μL
(定期的な輸血とは、毎月2単位以上の赤血球輸血が必要な場合をいう)


ステージ2:中等症
少なくとも下記の2項目を満たすもの

1:好中球数<1,000/μL
2:血小板数<50,000/μL
3:網赤血球絶対数<60,000/μL


ステージ1:軽症
それ以外のもの

 

血液疾患の患者さんへ

 

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